健康起因事故は、熱中症・体調不良・持病悪化などを運転前に見逃さない仕組みづくりが重要です。企業が行うべき健康診断、点呼、体調確認、健康障害防止対策を解説します。

夏場の高温、睡眠不足、脱水、持病の悪化、服薬状況の変化。
こうした体調の小さな変化は、本人にとっては「少し調子が悪いだけ」と感じるかもしれません。しかし、社用車や事業用自動車を運転する業務では、その小さな不調が判断の遅れ、集中力の低下、意識障害につながり、重大な交通事故のきっかけになる可能性があります。

企業にとって、従業員の健康管理は単なる福利厚生ではありません。運転業務がある会社にとっては、健康起因事故防止健康障害防止のための重要な安全管理です。

健康起因事故は増えている

国土交通省の資料では、健康起因事故は「運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなった事案」として、自動車事故報告規則に基づき報告された件数が示されています。2015年は244件でしたが、2023年は418件、2024年も398件と高い水準で推移しています。特に2023年は、2015年以降で最多の件数となっています。

また、2015年から2024年までの10年間で、健康起因事故を起こした運転者は計3,240人とされています。疾病別では、心臓疾患470人、脳疾患423人、呼吸器系疾患231人、消化器系疾患164人、大動脈瘤及び解離104人が確認されています。

この数字から分かるのは、健康起因事故は「まれな事故」ではないということです。運送業だけでなく、営業車、送迎車、福祉車両、社用車を使う企業にとって、健康管理は交通事故防止と直結する経営課題です。

熱中症単独の件数は公表されていないが、体調不良は事故要因になり得る

健康起因事故の中で、「熱中症だけ」を原因とした事故件数は、国土交通省の公開資料では年別に独立して確認できません。そのため、「熱中症による運転事故が何件」と断定することはできません。

一方で、北陸信越運輸局管内の資料では、疾病別件数の「その他」の例として、胃腸炎、熱中症、貧血、コロナなどが挙げられています。つまり、熱中症は健康起因事故の一因になり得るものの、公開統計上は大きな分類の中に含まれている可能性があります。

厚生労働省の熱中症対策資料でも、睡眠不足、前日の多量の飲酒、朝食の未摂取、体調不良などが熱中症の発症に影響を与えるおそれがあるとされています。 また、熱中症予防では、水分補給と暑さを避けることが重要とされています。

運転業務で大切なのは、倒れてから対応することではありません。
頭痛、めまい、吐き気、強い疲労感、寝不足、持病の違和感を「運転前」に止めることです。

健康診断・点呼・体調確認を仕組みにする

健康障害防止で重要なのは、従業員本人の自己申告だけに頼らないことです。

「大丈夫です」
「少し休めば問題ありません」
「今日だけなので運転します」

現場では、このような会話が起きがちです。しかし、会社として本当に必要なのは、本人の気合いや経験に頼ることではなく、誰が確認しても同じ判断ができる仕組みを作ることです。

具体的には、健康診断結果の確認、再検査・要治療者への対応、点呼時の体調確認、睡眠時間の確認、飲酒状況の確認、服薬状況の把握、暑熱環境での水分・塩分補給、異常時に乗務を中止する基準づくりが必要です。

国土交通省資料では、令和6年に健康起因事故発生以前に運転者自身が体調不良を自覚していたにもかかわらず、運行業務を開始・継続していたものが175件確認されています。そのうち28件は人身被害事故に、103件は物損事故につながったとされています。

これは非常に重い事実です。体調不良を感じていたにもかかわらず運転を続けた結果、事故につながったケースがあります。だからこそ、企業には「体調不良を言いやすい職場づくり」と「申告があったときに止められる管理体制」の両方が必要です。

産業保健総合支援センターや協会けんぽの支援を活用する

企業が健康管理体制を整えるうえでは、公的な支援機関の活用も有効です。

産業保健総合支援センターは、全国47都道府県に設置されており、産業医、産業看護職、衛生管理者などの産業保健関係者への支援に加え、事業主等に対して職場の健康管理に関する啓発を行っています。窓口相談、研修、情報提供、広報・啓発なども実施されています。

また、協会けんぽでは、事業所の健康経営を支援する取り組みが行われています。協会けんぽ東京支部では、コラボヘルスの一環として、事業所の健康経営を支援していると案内されています。

健康起因事故防止は、安全運転管理と健康経営の接点にあります。健康診断を受けさせるだけで終わらせず、結果をどう活かすか。点呼時に何を確認するか。体調不良時に誰が判断するか。ここまで整えて初めて、会社を守る仕組みになります。

イシュー・マネジメント株式会社ができる支援

イシュー・マネジメント株式会社では、社用車・事業用自動車を使用する企業に向けて、安全運転管理と健康障害防止の両面から支援を行っています。

安全運転研修では、単に「気をつけましょう」と伝えるだけではなく、健康起因事故の実態、点呼時の確認ポイント、管理者が見るべき体調変化、暑熱環境での注意点などを、現場で実践できる形に落とし込みます。

また、運転前の体調確認、運行管理者・安全運転管理者の業務整理、アルコールチェック、     教育動画、ドライブレコーダーを活用した運転傾向の見える化など、               企業ごとの状況に合わせた仕組みづくりをサポートします。

健康管理は、本人だけの責任ではありません。
運転を業務として命じる以上、会社には「安全に運転できる状態か」を確認する責任があります。

健康起因事故は、突然起きるように見えて、実はその前に小さなサインが出ていることがあります。
そのサインを見逃さず、運転前に止める。
それが、社員を守り、会社を守り、社会の安全を守る第一歩です。

イシュー・マネジメント株式会社は、企業の安全運転管理と健康障害防止を通じて、社員が毎日無事に「ただいま」と帰れる職場づくりを支援してまいります。