なぜ法定速度の見直しが必要なのか

近年、日本では歩行者や自転車利用者の交通事故が住宅街や通学路など“生活道路”で多く発生しており、その多くが人の往来が激しい近距離で起きています。事故後の対応だけでは被害を防ぎ切れないため、道路交通法改正により予防重視の仕組みを整備する動きが進んでいます。

新ルールはいつから?改正の施行日と対象範囲

改正された道路交通法施行令は、2026年9月1日から施行される予定で、生活道路として分類される一般道路の法定速度が「標識がなく中央線・中央分離帯等が設けられていない道路」において、現行の60km/hから30km/hに引き下げられます。
ただし、以下のような道路については法定速度60km/hのまま維持されます。

  • 中央線または車両通行帯が設けられている一般道路
  • 中央分離帯等の構造により交通の往復が方向別に分離されている道路
  • 自動車専用道路や高速自動車国道(本線・加速車線・減速車線を除く)など

生活道路における30km/h制限の狙い

生活道路とは、住宅地や商店街、学校の近くなど地域住民の生活に密接な道路を指します。歩行者や自転車を含むあらゆる道路利用者の安全を向上させることが目的です。30km/hという制限速度は、事故時の致死率を大きく抑えるデータに基づいており、従来速度が速かった生活道路での重大事故のリスクを下げる効果が期待されています。

ドライバーに求められる意識改革

この改正で影響を受けるドライバーは、「標識がない」「見慣れた生活道路だから速度出しても大丈夫」と思いがちな道路でも時速30km/h以下で走行する義務が生じます。速度に慣れるまで時間を要する可能性があるため、改正施行前から「ゆとりを持った運転」を心がけることが重要です。また特に通学・通勤時間帯には歩行者や子ども・高齢者の動きに注意し、減速・徐行を意識する必要があります。

企業・自治体の役割と今後の課題

企業では社用車・配送車などが影響を受けるため、運行管理において速度管理やルート選定の見直しが必要となります。自治体側は、標識の整備やナビ・地図アプリの更新、広報啓発による周知などの準備が急務です。制度施行後に「知らなかった」で違反となることのないよう、情報発信の徹底が求められます。

まとめ

2026年9月1日から、生活道路の多くで法定速度が60km/hから30km/hに引き下げられるという今回の改正は、事故の“事後ゼロ”を目指す大きなステップです。ドライバー個人、企業、自治体それぞれがその意義を理解し、事前対策をしっかり講じることで、安全な道路環境を実現していきましょう。